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【裸で狼の群れのなかに Naked Among Wolves】リメイク版映画の感想

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ネットフリックスで「裸で狼の群れの中に Naked Among Wolves(Nackt unter Wölfen )」を見てみました。

2015年のドイツ作品です。全編ドイツ語です。

1963年のオリジナル(タイトルは同じ)のリメイクです。

リメイクだとは知らずに見ました。

オリジナルの方はまだ見ていませんが、今度見てみたいと思います。

あらすじ

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第二次世界大戦の末期、ヴーヘンヴァルト強制収容所に3歳の少年がこっそりある囚人のスーツケースに入れられてきます。最初は反対しながらも、この小さな男児を守ろうと決意した囚人(カポー?)たちだが…

という内容です。

 

【裸で狼の群れのなかに】映画の感想(ネタバレなし)

ナチスドイツの強制収容所の映画で「おもしろい」という言葉は不適切かもしれませんが、見て良かったと思います。

内容が内容だけに、残酷な描写も数多くありますが、やはりハリウッドが作る戦争映画とは違った趣きが感じられ、単なる強制収容所でのサバイバルだけでない何かを感じました。

ハリウッド映画にありがちな盛り上げBGMや、観衆の涙を誘おうとするようなわざとらしい演出はありません。収容所の過酷な日常が淡々と描かれています。  

キャストも良かったです。主人公ハンスもなかなかの美形。

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私のお気に入りは、ホヘルを演じたピーター・シュナイダーさん。存在感ありました。

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ヘルムットを演じたシルベスター・グロスさんもなかなかでした。

そして強烈な印象を残したのが、この強制収容所でお偉いさんの一人ハーマンを演じるサビン・タンブレアさん。

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最初に出てきた瞬間に「こいつ、やべえ」と思います

とにかく不気味な雰囲気をムンムン醸し出しています。

やばいと思ったら、本当にやばかったんですけどね。典型的なサド気質で。ドイツ映画を見る機会があまりないのですが、この方はいい役者なんじゃないでしょうか。

そして映画の題名もこれまたドンピシャですね。

 

ここからはネタバレのあらすじ&感想です。

 

ネタバレあらすじとネタバレ感想

これが男の子。可愛い。

怖いことが分かっているので、スーツケースからなかなか出てきません。

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ここからはネタバレありです。

主人公ハンスは父親と一緒だったのですが、収容所に来るなり父親は殴られ、離れ離れになります。そのすぐあと、カポーのホヘルがやってきて、父親が殺されたことを知らされます。大声で泣き叫ぶこともできず、静かに涙を流すハンス。

ハンスのお父さんがあまりにもあっけなく家族が殺されてしまっていたため、私の中では悲しいよりも先に悔しさがこみ上げてきました。こんなことになってしまった現状への悔しさ、父親を救えなかった悔しさ、知らない間に父を殺されていた悔しさです。

男の子をスーツケースに入れてこっそり運んできた男性は、男の子の父親ではなく、父親の友人でした。おそらく男の子の家族は亡くなっていたのでしょう。

その設定だけで涙出そうですけど、この父親代わりとなった男性は自分の身を挺して男の子を守ろうとします。男の子も、父親のように思っています。

しかし残念ながら、父親代わりの男性は年齢も結構いっていることから、処刑されるという噂の場所へ移動を命じられます。しかし男の子を守ろうと決めた主人公たちは、スーツケースに石などを詰めて、父親代わりの男性に渡します。

何も知らない男性は、スーツケースを持って他の囚人たちと一緒に進行し始めるのですが、すぐに何かおかしいことに気が付き、その場でスーツケースを開いて中を確認します。そこには男の子の姿はありませんでした。

茫然とし、立ちすくむしかない男性。他の囚人は進行していき、男性は一人ぽつんと立ちすくんだまま、銃殺されてしまいます。

私にとっては、その後にでてくる拷問や処刑シーンより、このシーンが一番堪えたシーンでした。子供がいる身として、スーツケースを開いたときに大事な子がいないあの喪失感、絶望、憂惧、怖れは、筆舌に尽くしがたい感情でした。(↓そのときの表情)

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しかし私たち観客は、男の子がまたスーツケースに隠れて男性と一緒に向かう先は処刑所であることを知っていて、囚人たちの行為が男の子の命を救うためであることを理解しています。

生きるため、男の子の命を救うためのどうしようもない決断に、観客は絶望を越える何かを感じるはずです。

また、これが父親の友人ではなくて、本当の父親だったらと思うと…

父親代わりの男性がいなくなってからは、ハンスが面倒を見るようになります。

しかし密告により、子供がいるということが収容所の司令官にバレてしまい、ハーマンが部下を引き連れてカポーの作業場に捜索にきます。

子供はすでにほかの場所に移動していたため見つからずに済むのですが、場所を吐かせるためにカポーの二人が連れ去られ、この二人は映画の最後の方まで拷問され続けます。

その一人が私の好きなホヘルさんです。

ホヘルさんは外見はタフそうに見えますが、自分は拷問に耐えられないともう一人の拷問を受ける仲間に弱音を吐きまくります。

しかし、皮肉にも最後に生き残るのはこのホヘルさんだったりします。

というのも、もう一人の仲間はホヘルさんよりも意思が強く、子供を絶対に守るという信念があり、ホヘルさんを励まし続けていました。ホヘルさんは最初から「危険すぎる」と男の子を匿うのに反対していたのです。

ハーマンは誰が口を割るか割らないか見抜いていたのでしょう。強い者を拷問しても口は割れないと。

それでも、弱音を吐きながらもホヘルさんは最後まで口を割りませんでした。

弱い方が生き残って、強い方が命を落としたというのが皮肉です…

最後、アメリカ軍が来たので、ナチス党員は散り散りに逃げるのですが、あのナチス党員ハーマンさんは、なんと髪の毛を剃り、囚人服に着替え、顔や体にススをつけて、囚人のフリをして一足先に逃げます。

途中で収容所に向かう途中のアメリカ軍の小隊とすれ違い、アメリカ軍の兵士から「おい大丈夫か、乗っけてやろうか、まだこの辺にはナチがいるから気を付けろよ」なんて言われながら、まんまと逃げおおせてしまいます。

ここは気持ちの悪さが残りますが、史実ですからね…

というわけで、暗くて苦しいテーマではありますが、見てよかったと思える一本でした。

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