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書評「スタンフォードで一番人気の授業」を読んだ感想


スタンフォードでいちばん人気の授業 (幻冬舎単行本)


アメリカから利用しているebook japanで「スタンフォードで一番人気の授業」が割引されていたので読んでみました。

いかに最先端でエッジーな内容を教えているのかと思いきゃ、実はスタンフォードで教えるのは普遍的な内容なんだそうです。

ここではその一部を紹介します。

 

「スタンフォードでいちばん人気の授業」

選択の科学

本著で私にとって一番タメになった部分がここ。かねてから選択と意思決定について思うところがあったのですが、本著を読んでひざをたたく思いでした。

決断疲れやマジカルナンバー7±2など、絶対に知っておいた方がいい有益な情報が書かれています。

特に私は不注意優勢型ADDぽいので、今後の人生で大いに参考になると思いました。

本著ではシーナ・アイエンガー教授の「選択の科学」が紹介されています。テレビショッピングがなぜ深夜に放送されているのか、面接される順番が人生を左右することになる理由、予算より高い車を買ってしまう理由…これらを科学的に証明している「選択の科学」も是非一読したいものです。

 

日本で破壊的イノベーションが起きない理由

社員に投資することからイノベーションを起こすのが得意なはずの日本で、アップルやグーグル、アマゾンのような破壊的イノベーションが起きないのは何故なのか、本著を読むとそれがよく理解できます。

ー日本企業の課題は、変革のスピードが遅いことだ、とはよくいわれることですが、その要因は、社員の階層意識にあると思います。(中略)

つまり、ピラミッド構造が問題なのではなく、社員の意識が問題なのだということだ。仮にフラットな組織に替えてみたところで、社員の考え方が変わらなければ、問題は解決しないという。

 

エリートの落とし穴

スタンフォードの学生は、卒業後、大手企業に就職する人が多いが、その中で厳しい現実に直面することも多々ある。解雇されたり、降格されたり、同僚に裏をかかれて出世の邪魔をされたりするのは日常茶飯事だ。ところがスタンフォードの学生は、エリートであるがために、「リーダーはこうあるべき」という理想を追求しようとする。それが仇となりかえって出世できないことも往々にしてあるのだそうだ。

フェファー教授はこれをエリートの落とし穴と呼んでいます。エリートゆえに正しいレールを歩こうとする、ゆえに既存枠から抜け出せず、リーダーになれない。日本企業に見られそうなケースですね。

シリコンバレーの会社で有能なアジア人女性が同格の男性ライバルに手柄を乗っ取られそうになったときのエピソードは、日本人が欧米人と競争したときにいかにも起きそうな話であり、フェファー教授のアドバイスはビジネスだけでなく弱肉強食の資本主義社会で忘れてはならないものです。

 

バンブー・シーリング(竹の天井)

女性の進出を阻むガラスの天井のほかに、こういう言葉があるそうです。竹という言葉から想像がつくと思いますが、欧米社会の中でアジア人が進出を阻まれているということです。

そういえば小池都知事が格好つけて日本社会にはガラスの天井ならぬ鉄の天井とか意味不明な造語を発して、英語がわかる人たちは恥ずかしいと思ったのではないでしょうか。

スタンフォードやハーバードの学部生のアジア人パーセンテージが20%を超えているというのにフォーチュン500企業の役員のうち、アジア系は2%しかいないということです。

アジア人は自分で売り込むことをしませんし、社内で目だとうと思いません。欧米人と比べるとアグレッシブさが足りないですし、権力がある人のようにふるまうのも下手です。だから、グローバル企業では相応な評価を得られないのです。

ビジネスの世界だけじゃなく、ハリウッド映画や海外ドラマを見ていても、アジア系の主役が極端に少ないことからも容易に分かりますね。

 

レジリエンスを身に付ける

フェファー教授が社内政治で勝ち抜くために教える現実的な手法の中に「レジリエンスを身につける」というものがあります。

レジリエンスとは、失敗や挫折から立ち直る力

です。

仕事上の失敗を個人の失敗ととらえないこと、失敗しても「自分の責任だ」と思わないこと、失敗しても動じずに冷静に対処することで、周りからも「できない奴」と思われなくなるということです。

日本では一度失敗すると再起ができないような風潮が出きあがってしまっていて、失敗にまったく寛容じゃありません。これが日本で破壊的イノベーションを起こすのが難しい土壌を作り上げてしまっているように思います。

 

「払いすぎだ」と思われるほどの補償金を支払う

本著では、会社が払いすぎとも思われる補償金を払った結果、評判によってのちに補償金を回収できるほどの信頼を顧客から得られるようになった例がいくつも紹介されています。

些細な話ですが、この経営方針はアメリカの末端社会でも見られます。たとえば私たちがレストランで食事をとる時、注文したドリンクが気に召さなかった場合がまれにあります。アメリカのレストランのウェイターは「お味はどうですか?」と聞いてきてくれるので、そのときに正直に「このドリンクは好みに合わなかったです」と言うと、ドリンクを変えてくれるのです。もちろん料金を追加することはありません。

日本の感覚からいうと考えられないことですから、気前が良いなぁと最初は驚いたのですが、食事を終えた後はやはり満足感が高く、そういうレストランは必ずリピートしているんですよね。まさに損して得とれです。

わずか数百円のことですが、顧客の信用という目に見えない価値を考えると、正しい判断だと思います。まして昨今はSNSや口コミサイトで企業の評判を直に知ることができる社会ですから。

日本企業のカスタマーサービスは全般的に丁寧ですし、質も高いですけど、果たしてアメリカ企業並みの損して得とれを実行できるかというと、それは疑問です。

 

ミラーニューロン

人の感情が周りに伝染するというのを聞いたことありませんか。周りにイライラしている人がいるとこちらもイライラしてきたりするアレです。

本著によれば、デキる人ほどユーモアをいう回数が多いそうです。上司がどれだけ部署を和ませられるか、それによって部署全体の生産力が変わってくるようです。

これは分かる気がしますよね。誰だってイライラした上司や怒りっぽい上司のもとで働くのはイヤですし、上司が部下を叱責ばかりしているとオフィス全体が殺伐としてみんながストレスを感じます。非生産的ですよね。

日本人はアメリカ人に比べて職場のユーモアが絶対的に少ないと思うので、この辺はすごく学ぶ価値があります。

 

まとめ

本著を足がかりに次々と色々な段階に踏み込んで勉強できそう。ビジネス初心者や世の中の仕組みを知る入門書として価値があります。