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【私の中のあなた】映画の感想:号泣必至だけど、府に落ちない点も多い

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母親役がキャメロン・ディアスということが引っかかったのと、あらすじを読んでピンとこなくて、ずーっと先延ばしにしていた映画です。総合評価が高いので見てみることにしました。

登場人物全員に共感できちゃって確かに号泣は間違いなしなんだけど、腑に落ちない点がいくつかあって、ニック・カサヴェテス監督のいつものクセがまた出ちゃったような映画です。

 

【 私の中のあなた】作品情報

原題:My Sister's Keeper
製作年:2009年
上映時間:109分
監督:ニック・カサヴェテス(君に読む物語、ジョンQ)
出演:キャメロン・ディアス、ジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァ、アビゲール・ブレスリン、アレック・ボールドウィン
言語:英語
ジャンル:ドラマ

 

【私の中のあなた】あらすじ

白血病の姉(ソフィア・ヴァジリーヴァ)に臓器を提供するドナーとして、遺伝子操作によって生まれた11歳のアナ(アビゲイル・ブレスリン)。

彼女はこれまで何度も姉の治療のために犠牲を強いられてきたが、母サラ(キャメロン・ディアス)は愛する家族のためなら当然と信じてきた。

そんなある日、アナは姉への腎臓提供を拒否し、両親を相手に訴訟を起こす。

シネマトゥデイ

 

【私の中のあなた】感想

とりあえず泣けます。号泣します。中盤ぐらいからケイトの状態はどんどん悪くなっていきますので、泣かないわけがありません。白血病の少女が病気と闘いながら、最初で最後の恋をしたりするんですよ、泣くに決まってるじゃないですか。

実は本作は見る前からキャメロン・ディアスが母親という点と、白血病の姉の治療のために下の子を産んだ・・・という点がが引っかかっていて、イマイチ見る気が起きなかったんですよね。

キャメロンDについては、映画を見終わった後も、きっとこの役には他にベターな女優さんがいると思う気持ちは変わっていません。でも、キャメDはよくやったと思います。

元弁護士でやり手で強い母、子どもの命を救うためになんでもやろうと固い意志を持ち、過度なレベルにまで達してしまった母親の様子は伝わってきました。

白血病を抱えたケイトを演じたソフィア・ヴァジリーヴァも素晴らしかったです。母親の反対を押し切って、ケイトをビーチに連れて行ったシーンは、すごくリアルで良かったです。

自分が母親だったらきっと同じように半狂乱になって反対してたと思います。一方、旦那はきっとこの父親のように私をぶん投げてでも娘をビーチに連れて行っただろうなと。登場人物それぞれの思いが理解できるし、伝わってきました。

母親としては、娘が死ぬことが最後の日まで受け入れられないのです。だからこの母親の気持ちがすごくよく理解できました。ところが同時に、父親やケイトの気持ちもすごく理解できるわけです。もう死んで楽になりたい、その前にいちどだけビーチに行きたいと願うケイト、その願いを叶えてあげたい父親。どちらの気持ちも痛いほど理解できて、涙が止まりませんでした。

良かった点を述べたところで、今度は冒頭にもちょっと言ったように、悪かった点を指摘してみようと思います。

この監督の作品を見ていつも思うのは、俳優の表情や微妙な演技より、会話に依存しすぎという点です。ジョンQでもまったく同じ思いを抱きました。言葉で説明しなくていいことも全部会話に入れてしまうので、ちょっとメロドラマすぎてしまうんですよね。

一番良かったのは父親役のジェイソン・パトリックですかね。ケイトがドレスを着て現れたときの父の表情、あれで私たちは彼の心をすべて悟れましたでしょ?でも父親以外はとにかく会話にすべて押し込まれていて、一から十まですべてを説明してくれなくていいんですよ、監督・・・と言いたくなる時もありました。感傷的にさせようとしているんだなと斜めに見てしまうんですねぇ。

母親が家族に隠れて一人で苦悩している様子もないし、母親の心情を表す静的なシーンがまったくありません。唯一あったのは自分の姉妹に問いかけられた時だったと思いますが、そのシーンでさえも自分の考えは曲げず、弱音を吐露するとかがまったくありません。

母親は長女にしか愛情を見せていないし、周囲を犠牲にしていることの葛藤や辛さがソックリ抜けています。そういった細かい感情の機微が表現しきれていないので、末っ子のアナとの関係がイマイチよく伝わってきませんでした。これはキャメDのせいじゃなくて、そういうシーンをまったく入れていない監督のせいです。

家族愛をテーマとしている映画なのに、母親が長女のために末っ子を犠牲にしていることに何の罪悪感も辛さも感じさせないのはちょっと疑問が残ります。自分がやってることは本当に正しいのか、とか自分を疑う瞬間がきっとあるはずなのに、そういうシーンが全然ない。

アンナが親を裁判で訴えている割に普通に暮らしているとかも理解できません。アンナが「自分が生まれてきたのは姉を助けるため」と知っているというのもあり得ません。両親がアンナにそう言ったってことですよね?それとも度重なるオペで自分でそう気が付いたのか。クローンみたいなもんですか?

そもそも娘を助けるためにもう一人創るっていう設定もおかしいと思うんですよね・・・白血病の姉の命を美化しすぎだし、その命を助けるために妹を作るなんて、考え方おかしいでしょ普通。その点に違和感があって、今まで触手が伸びなかった理由です。それで家族の愛や絆がテーマと言われても、ちょっと腑に落ちないですね。

それと、献身的に家族を助けてくれた叔母、兄弟のジェシーの場面が少なかったのが残念でした。この二人にももうちょっとフォーカスしてくれたらよかったのではないかと思います。

あと医療倫理というのかな?裁判にまで及んだ話だけど、この辺もちょっと突っ込みが足らなかった気がします。最後にアンナに書類持ってきただけで終わりでしょ?まぁ、姉を助けるために妹を産んで犠牲にするっていうトンデモなあらすじなので、そこからして医療倫理もへったくれもない気がしますけど。

原作の本は本作とは比較にならないほど優れたものらしいので、是非読んでみたくなりました。原作を読んだことがない人からの評価は高いですが、原作を読んだ人の評価が低いです。ちなみに原作の最期は、本作の最期とまったく違う終わり方です。

評価:55点