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映画「ゴーン・ベイビー・ゴーン」2回目を視聴した感想(ネタバレあり)

ゴーンベイビーゴーン

「ゴーン・ベイビー・ゴーン」2回目の視聴だが、内容を思いだせなくて気になってしまい、改めて見てみた。

けっこう有名な作品なので見たことある人も多いだろう。

2007年の作品で、DVDが出たときに見た記憶があるのだが、当時はなんだかいまいち心に響くものがなく「これ見たような気がするけど、なんだったっけか」と忘れ去っていた作品だ。

ベン・アフレック監督作品。

主演はベン・アフレックの実の弟ケイシー・アフレック。

ケイシー・アフレックは、映画「トリプル9」でも主演級で出演している。(トリプル9はウォーキング・デッドでダリルを演じるノーマン・リーダスも出ている) 

タカヒデ・カワカミさんという日系の方がセカンド・アシスタント・ディレクターとしてクレジットの上の方に表示されていた。

ゴーン・ベイビー・ゴーン映画の感想と評価(ネタバレ)

まず主要な登場人物はこちら。

「ゴーン・ベイビー・ゴーン」登場人物

パトリック

ゴーンベイビーゴーンパトリックケイシーアフレック

主人公パトリックは、ケイシー・アフレックが演じる。

ボストンで生まれ育ち、アンジーと二人で私立探偵をしていて、ストリートや街の裏も知る主人公。

アンジー

ゴーンベイビーゴーンアンジーミシェルモナハン

公私ともにパトリックのパートナーのアンジー。

警察署長ドイル

ゴーンベイビーゴーンモーガンフリーマンドイル署長

自身も12歳の娘を亡くしている警察署長ドイル。

ニック刑事(左)とレミー刑事(右)

ゴーンベイビーゴーンレミー刑事エドハリス

エド・ハリスの存在感が強すぎるが、素晴らしい俳優。

ヘイリーン

ゴーンベイビーゴーンヘイリーヘイリーン

誘拐されたアマンダのドラッグ中毒の母。

ヘイリーンを演じたエイミー・ライアンは、助演女優賞を受賞した。

中の人エイミー・ライアンはこの映画の役ヘイリーンとはまったく違う綺麗な人でした。

ライオネル

ゴーンベイビーゴーンライオネルライノ

誘拐されたアマンダの叔父。誘拐されたアマンダの母ヘイリーンの兄弟で、妻ベアトリスとともにアマンダを自分の子のように思い、面倒をみていた。

 

「ゴーン・ベイビー・ゴーン」感想

一度目に見た時は、強い印象もなく、サスペンスなのかヒューマンドラマなのかなんなのか、何がいいたいのかまったくわからなかった。幼児誘拐、ネグレクト、児童虐待という非常に重いシリアスな話を取り上げているというのに、まったく印象に残らない作品だった。

二度目見てみると、前回よりは発見もあったりしたが、やっぱりピンとこない。

まず、主演のケイシー・アフレックだが、監督ベン・アフレックの実弟である。嫌いではないのだが、主演をはれる俳優ではないことは確か。ベン・アフレックと違ってタッパもないし、痩せている。ストリートや裏社会にも精通している役にはイマイチ迫力が足りない。

また、この方はフニャフニャ喋ることもあって、映画や役どころを選ぶ俳優だと思う。個人的にはもう少し年齢がいって渋さと若さも兼ね備えた30代後半くらいの俳優を起用してほしかった。

次に、パトリックの公私にわたってパートナーとなっているアンジーだが、彼女を私立探偵のパートナーとする必要があったのかどうか。主人公に金魚のフンみたいにくっついているだけで、池に飛び込んだ以外は目立つ行動もない。私立探偵の主人公を陰で支えるガールフレンドまたは婚約者としたほうが良かったのではないだろうか。感情をもとに最後の主人公の決断に異を唱えるという役割としても、陰で主人公を支えていた女性としたほうが良かったように思う。

この作品には、多くの名優が出演している。

まず、モーガン・フリーマンとエド・ハリス。特にエド・ハリスは個人的にも大好きな俳優だ。レミー刑事役も非常に良かったのだが、終盤で強盗をよそおってバーに入って来るという設定は稚拙だと思った。レミー刑事くらいであれば、誰か他の人を使って真相を知る邪魔者(ライオネル)を消すということはできたはずだ。せっかくのエド・ハリスの名演をぶち壊す軽率な設定だと思った。

ちょい役だが、パトリックの旧知の警官役を演じたマイケル・ケネス・ウィリアムズ。顔に大きな傷が印象的な俳優だ。トリプル9にも出ている。他でもたまに見かけるが、名脇役だ。

そしてドラッグディーラーでもありパトリックの友人でもあるブッバ。同じくベン・アフレックが監督する「タウン」にも出ているので、彼が気に入っている俳優なのだろう。小説より小物な印象だという意見が多く見られたが、私はこの俳優が気に入った。顔の表情がとても印象的なのだ。ベン・アフレック監督が気に入るのも納得した。

あと麻薬王チーズ役は、ブラックリストでマタイアス・ソロモンを演じているエディ・ギャゼジ。今回はハイチ人の麻薬王。不気味な雰囲気が光っている。

さて名優や脇役の演技が冴えわたる本作品だが、二回みてもどうもパッとしないというのが正直な感想だ。俳優陣がもったいなすぎると言ってもいい。ここが監督の力量なのかもしれないが、あとあと心に残る作品でもなければ、衝撃を受けた作品でもないし、いろいろ考えさせられる作品というわけでもない。

なぜなら作品のテーマは、法を順守するか、感情を優先するかという不変のテーマだからだ。家族を殺された者の復讐は許されるか否かなど、巷でもよく議論され、もはや陳腐化しているように思う。

感情に従えば、パトリックの最後の選択に「なんだこいつ」と不満を持つだろうし、どんな事情や感情があれ法治国家である以上、法は順守すべきだという思考なら「しかたない」と渋々だが賛成するだろう。

映画の脚本にもアラが目立つ。まずパトリックは知的で裏社会を知る私立探偵であるが、犯罪者の友人との結束など背景設定もまったくなく、どういう人物なのかが見えてこない。

最後の選択だけみれば、感情より法を守る、正しいことをする、正義感の強い人物ということになるが、忘れていまいか、彼は7歳の少年の死体を発見し、怒りという感情に支配されるがまま児童性的虐待者を処刑しているではないか。そして、レミー刑事も口添えしたのか、パトリックがどういう言い訳をしたのかは分からないが、まったくお咎めもない。

法を破り、私情を優先した主人公が、最後にあの選択をするのである。なぜなら「正しいことだからだ」。こんな穴のあいたスクリプトに納得いくわけがない。

アメリカのドラッグの蔓延はかなりひどいものがある。特に貧困層にいたっては、生まれ育った貧困町から抜け出せず、希望も見いだせず、この映画のように暗くダークな底辺社会は現実そのものだ。

日本でもネグレクトや幼児虐待はあるが、少なくとも日本ではドラッグがアメリカほど蔓延していない。車中でヘロインを打って意識を失っている両親の後ろにチャイルドシートに座っている子供がいるという目を覆いたくなるシーンは、連日ニュースで報道されている。ヘイリーンのような母親も珍しくない。

キリスト教徒が多いこともあって、養子縁組やフォスターペアレンツも多い。私のアメリカ人の友人にもフォスターペアレンツはいるし、子どものクラスメートにもフォスターペアレンツがいる(肌の色が違うので分かる)。旦那は警察官でもあったので、やはり子どものウェルフェアには敏感であり、私たちもフォスターペアレンツになることについて話し合ったことさえある。

フォスターチャイルドたちは、親がドラッグ中毒などの理由で児童保護局が間に入り、フォスターペアレンツとして登録している両親のもとに預けられている。本作のように刑事や警察署長であれば、ドラッグ中毒でネグレクトの母親から児童を保護する選択肢は偽装誘拐以外にも考えられたはずだ。

この作品を二回目に見た時、まっさきに思いだした映画がジェシカ・ビールズ主演の「トールマン」だ。トールマンは話はシンプルだが、ジェシカ・ビールズ演じる主人公の思惑が分かりやすいし、最初から最後まで主人公の主義は一貫していた。また背後にいる組織の存在も、社会構造のあり方や子どもたちのウェルネスという意味を一考させるきっかけをくれた。興味のある人は見てみてほしい。

ゴーン・ベイビー・ゴーンは、要は狙いすぎたというか、「考えさせる」深い社会派映画を狙ってしまったために陳腐化してしまった感がある。考えさせる映画だぞ、すごいだろというドヤ顔や監督の思惑が透けて見えてしまうのだ。

評価は60点。